昨日、米国ではPCEデフレータ(インフレ率の指標)が公表されました。このデータを見ながら来年以降の米国の金融政策について考えをまとめてみました。
結論としては、来年は金融政策が波乱要因になると見ています。
低金利継続は既定路線
FRBの金融政策スタンス
今FRBがどのような考えで金融政策を行っているかおさらいしてみましょう。
現在のFRBの金融政策スタンスは、「とにかくインフレが2%に安定するまで緩和する!」です。
なぜかというとリーマンショック以降、どんなに頑張っても安定的に2%にならなかったから。
FRBがインフレ率目標に使っているPCEデフレータの推移を見てみましょう。

見てわかると思いますが、インフレ率が2%に到達したのは少しの間だけ。その後は2%をちょっと下回って推移しています。
これ、歴史的には異常事態なんです。この時期失業率は過去最低レベルまで低下していました。つまり、景気はものすごくいい状態。過去経験では3%とかに言ってもおかしくない状況です。

みんなが働いてたくさんお金を稼ぐ→消費する→物価が上がるといった好循環が生まれ、次第に景気が過熱していきます。
過去のFRBはみな景気加熱によるインフレの上昇を抑えるために利上げをしてインフレの芽を摘もうとしていました。
ですが今は景気が加熱してるように見えても一向に物価は上がりません。
結構重要な平均インフレ率目標
ちなみに、今年の8月にFRBが導入した平均インフレ率目標は、景気が良くなって少しインフレ率が2%を超えてもまだまだ緩和を維持するよ!という強い意志を表明したものです。
これは、コロナ禍だから導入したのではなく(一因ではありますが)、リーマンショック以降存在する構造的な問題です。
だからコロナで景気が良くなったからといってちょっとやそっとで「ごめん、あんなこと言ったけどやっぱすぐ利上げするわ」とはなかなか考えにくい状態なのです。
それを見込んでいるからこそマーケットは低金利の長期化を見込んでどんどん株を買いにいっているわけですね。
マーケットは信じているからこそ敏感に反応する
私は来年も株は上昇すると思いますが、けっこう波乱もあるんじゃないかとみています。そのきっかけの一つが金融政策だと考えています。
さきほども触れたようにマーケットは低金利の長期を大前提にしています。ということはその大前提が崩れたら大変なことになるわけです。
ですので、投資家は「FRBの金融政策に変化がないよな…?」という点については常に目を光らせています。
2013年にバーナンキFRB議長が量的緩和の縮小に言及しただけでそれまで買い続けられていた国債は暴落(金利急上昇)し、株価も調整しました。
こうした状況の再来が起きないかどうか見ているわけです。しかも、今はどの資産が一番買われているかと言えば株式でしょう。
もし緩和の終了を前倒しするような話、データが出てくれば急激に株価が調整する場面はあってもおかしくないと思います。
今は、足許の感染拡大こそ気になりますが、大統領選挙も終わり、ワクチン開発も現実味を帯びてきています。
バイデン大統領が誕生し、米中対立も以前ほど先鋭化しないだろうと思惑もあります。
割と景気が回復してきて、先程みたインフレ指標が上昇すれば「本当にまだ緩和するの?」とマーケットは疑心暗鬼になるでしょう。そうなればなるほど金融政策関連の情報に振られやすくなると思っています。
個人的にはそういう疑心暗鬼的な調整局面がきても、しっかりとした根拠がなければ積極的に買いに行こうと思います。
先程も触れた通り、今のFRBの金融緩和スタンスはコロナ禍以前から考えられていた方針です。そのために新たなインフレ目標を導入しました。
中央銀行の新たな方針というのは相当重いものです。なぜなら、この方針通りに政策を行わないと政策が信用されなくなるからです。
しかも今のパウエル議長だけの話ではなく、長きに亘って影響を及ぼすものです。従って少々のことでは利上げの前倒しということは考えにくいです。
来年も金融政策はマーケットの重要なテーマになります。金融政策を読む上では経済を正しく読み取ることが重要です。
まとめ
・マーケットは低金利政策の長期化が大前提。
・従ってFRBの政策変更には超敏感
・今の所コロナ後の景気回復は順調。であれば気にするのはFRBが低金利政策の終了を前倒ししないか?
・FRBの緩和継続スタンスはコロナ禍だけでなく、景気が良くなってもインフレが上がらないという構造問題に立ち向かうもの。よってちょっとやそっとでは政策を変更しない。
このブログでも金融政策に影響しそうな情報はどんどん取り上げていこうと思いますのでまた見に来てください!